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京大推進研

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[[画像:Threepillars.png|thumb|350px|プラズマ・宇宙・半導体]]
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当研究室では,宇宙工学,電離気体工学の中心である"プラズマ応用"に主眼を置き,プラズマと接する固体表面・界面でのナノスケール反応機構の理解・応用を目的とした研究を行っています.プラズマ物理,表面反応物理,薄膜固体物理,信頼性物理を基礎とし,特にプラズマ中の原子分子・電子・イオン・フォトンと,絶縁膜・半導体・金属材料とのナノスケール相互作用の解明を通して,プラズマの工学的応用ならびに極限環境下で高機能・高信頼性を実現する新材料,機能素子,システム設計を探求しています.
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===主な研究テーマ===
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: 1.極限環境下における固体表面界面のナノスケール反応機構に関する研究:
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:   プラズマと固体(絶縁膜,半導体,金属)表面とのナノスケール相互作用は,その材料物性のみならず,システム全体の信頼性寿命に影響します.
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:   原子レベルでプラズマ-固体表面反応を理解することで,極限環境下での材料腐食などを予測・制御することを目指します.
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:  (例:イオンエネルギー・フラックス最適化,統計的ばらつき・ゆらぎ最適制御設計,分子動力学・量子化学計算科学など)
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: 2.極限環境下で用いられる新機能材料創製とその信頼性物理に関する研究:
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:   宇宙空間のような極環境下において高性能・高信頼性を達成する新しい材料・デバイス設計を実現します.
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:  (例:宇宙用途を鑑みた耐プラズマ性・超硬度特性をもつ薄膜BN構造材料設計,耐放射線性をもつ抵抗変化型メモリデバイスの高信頼性設計など)
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: 3.新機能材料設計のための新しい電気的・光学的物性解析手法の研究:
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:   高信頼性材料設計を可能にする,誘電関数・量子トンネル過程に着目した新しい解析・設計手法を実現します.
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:  (例:ナノ領域での新変調反射率分光・キャリア捕獲準位密度定量化など)
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<!--[[画像:Threepillars.png|thumb|350px|プラズマ・宇宙・半導体]]
 
[[画像:ICP.jpg|thumb|250px|誘導結合型プラズマ]]
 
[[画像:ICP.jpg|thumb|250px|誘導結合型プラズマ]]
 
航空宇宙機の推進に関連する作業媒質である '''電離気体(プラズマ)''' に関する基礎研究並びに応用研究をおこなっています。それらの力学的性質と共に、構成要素である原子分子やイオンの気相中での反応過程並びに固体表面との相互作用に関する研究にも重点を置いています。
 
航空宇宙機の推進に関連する作業媒質である '''電離気体(プラズマ)''' に関する基礎研究並びに応用研究をおこなっています。それらの力学的性質と共に、構成要素である原子分子やイオンの気相中での反応過程並びに固体表面との相互作用に関する研究にも重点を置いています。
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[[画像:Microplasma thruster.jpg|400px|thumb|ナノサテライトを想定したマイクロプラズマスラスタ<br>[http://www.iupac.org/publications/pac/80/9/2013/ Y. Takao et al., Pure Appl. Chem. '''80''' (2008) 2013] ]]
 
[[画像:Microplasma thruster.jpg|400px|thumb|ナノサテライトを想定したマイクロプラズマスラスタ<br>[http://www.iupac.org/publications/pac/80/9/2013/ Y. Takao et al., Pure Appl. Chem. '''80''' (2008) 2013] ]]
 
===ナノサテライト用の新型スラスタ(推進器)の研究開発===
 
===ナノサテライト用の新型スラスタ(推進器)の研究開発===
シリコンナノサテライトの実現のための重要な要素である、マイクロプラズマ源とマイクロノズルから成るマイクロ波励起の電熱加速型マイクロプラズマスラスタの具現化・実用化に取り組んでいます。当研究室では、マイクロ波源として移動体通信地上基地向けの半導体高周波素子を用いたマイクロ波励起超小型プラズマ推進機(マイクロプラズマスラスタ)を提案しております。
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シリコンナノサテライトの実現のための重要な要素である、マイクロプラズマ源とマイクロノズルから成るマイクロ波励起の電熱加速型マイクロプラズマスラスタの具現化・実用化に取り組んでいます。当研究室では、マイクロ波源として移動体通信地上基地向けの半導体高周波素子を用いた、マイクロ波励起超小型プラズマ推進機(マイクロプラズマスラスタ)を開発しました。
  
 
本研究のスラスタは電熱加速型であり、マイクロプラズマ源とマイクロノズルの2つの部分から構成されます。マイクロプラズマ源は、内径 2 mm、長さ約 10 mm の円筒型誘電体容器とそれを覆う金属の同軸構造をなし、この容器内部に推進剤ガスを数 10 kPa 程度の圧力で導入し、同軸ケーブルを介してマイクロ波を供給することでプラズマを生成します。プラズマ源で生成された高温高圧のプラズマは、容器の端に取り付けられたマイクロノズルで膨張し、空力的に加速されて推力を得ます。
 
本研究のスラスタは電熱加速型であり、マイクロプラズマ源とマイクロノズルの2つの部分から構成されます。マイクロプラズマ源は、内径 2 mm、長さ約 10 mm の円筒型誘電体容器とそれを覆う金属の同軸構造をなし、この容器内部に推進剤ガスを数 10 kPa 程度の圧力で導入し、同軸ケーブルを介してマイクロ波を供給することでプラズマを生成します。プラズマ源で生成された高温高圧のプラズマは、容器の端に取り付けられたマイクロノズルで膨張し、空力的に加速されて推力を得ます。
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<td>[[画像:absorbance.png|200px|thumb|塩素ガスによる誘導結合型プラズマ (ICP) でエッチングされたシリコン基板の分光測定結果]] </td></tr>
 
<td>[[画像:absorbance.png|200px|thumb|塩素ガスによる誘導結合型プラズマ (ICP) でエッチングされたシリコン基板の分光測定結果]] </td></tr>
 
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===プラズマエッチング中の材料の表面診断===
 
===プラズマエッチング中の材料の表面診断===
 
プラズマによる材料加工(プラズマエッチング)においては、反応が進展する過程やメカニズムを明らかにすることが重要になります。FT-IR (フーリエ変換赤外吸収分光法) により、反射光の強度を測定し、基板の表面にどのような粒子が存在するかを明らかにします。
 
プラズマによる材料加工(プラズマエッチング)においては、反応が進展する過程やメカニズムを明らかにすることが重要になります。FT-IR (フーリエ変換赤外吸収分光法) により、反射光の強度を測定し、基板の表面にどのような粒子が存在するかを明らかにします。
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[[画像:ASCeM.png|thumb|400px|[http://dx.doi.org/10.1116/1.2958240 Y. Osano & K. Ono, JVST B '''26''' (2008) 1425]; [http://jjap.ipap.jp/link?JJAP/49/08JE01/ H. Tsuda et al., JJAP '''49''' (2010) 08JE01]; [[doi:10.1016/j.tsf.2009.11.030|K. Ono, et al., Thin Solid Films '''518'''(13) (2010) 3461]] ]]
 
[[画像:ASCeM.png|thumb|400px|[http://dx.doi.org/10.1116/1.2958240 Y. Osano & K. Ono, JVST B '''26''' (2008) 1425]; [http://jjap.ipap.jp/link?JJAP/49/08JE01/ H. Tsuda et al., JJAP '''49''' (2010) 08JE01]; [[doi:10.1016/j.tsf.2009.11.030|K. Ono, et al., Thin Solid Films '''518'''(13) (2010) 3461]] ]]
[[画像:fig3_tsuda.png|thumb|400px|H. Tsuda, et al., Jpn. J. Appl. Phys. (2011) in press.]]  
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[[画像:fig3_tsuda.png|thumb|400px|[http://jjap.jsap.jp/link?JJAP/50/08JE06/ H. Tsuda, et al., Jpn. J. Appl. Phys. '''50''' (2011) 08JE06.] ]]  
 
===Si エッチングのモデリング・シミュレーション===
 
===Si エッチングのモデリング・シミュレーション===
 
原子スケールによるプラズマ・Si 表面相互反応の理解のため、当研究室では独自に原子スケールセルモデル(Atomic-Scale Cellular Model:ASCeM)を開発しています。本モデルでは、被エッチング表面を、基板 Si 原子1個を中央に含む矩形の微小セルに分割するとともに、パターン内(Vacuum)も同じ大きさの矩形セルに分割して、表面/界面移動を取り扱います。粒子輸送、表面反応過程にはモンテカルロ法を用い、イオンの散乱や内部への侵入はでは、入射イオンと基板原子との間の二体ポテンシャルにもとづき、入射イオンの基板原子による古典的な弾性衝突過程を連続的に計算し、表面反射や内部への侵入を表現しています。
 
原子スケールによるプラズマ・Si 表面相互反応の理解のため、当研究室では独自に原子スケールセルモデル(Atomic-Scale Cellular Model:ASCeM)を開発しています。本モデルでは、被エッチング表面を、基板 Si 原子1個を中央に含む矩形の微小セルに分割するとともに、パターン内(Vacuum)も同じ大きさの矩形セルに分割して、表面/界面移動を取り扱います。粒子輸送、表面反応過程にはモンテカルロ法を用い、イオンの散乱や内部への侵入はでは、入射イオンと基板原子との間の二体ポテンシャルにもとづき、入射イオンの基板原子による古典的な弾性衝突過程を連続的に計算し、表面反射や内部への侵入を表現しています。
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====大規模スケール分子動力学 (MD) 法====
 
====大規模スケール分子動力学 (MD) 法====
分子動力学(Molecular Dynamics)法を駆使し、Cl<sub>2</sub>/O<sub>2</sub> 混合プラズマによる Si エッチングにおける表面反応を追跡しています。これまでの研究により、エッチング時の微小な表面ラフネス形成の形成メカニズムを明らかにしました。このラフネスは、さらに大きなスケール(ナノ~マイクロオーダー)のラフネス形成を誘発すると考えられ、今後のデバイス開発においては、こうした微小な表面ラフネスの正確な制御が強く要求されます。
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分子動力学(Molecular Dynamics)法を駆使し、Cl<sub>2</sub>/O<sub>2</sub> 混合プラズマによる Si エッチングにおける表面反応を追跡しています。これまでの研究により、エッチング時の微小な表面ラフネス形成の形成メカニズムを明らかにしました。このラフネスは、さらに大きなスケール(ナノ~マイクロオーダー)のラフネス形成を誘発すると考えられ、今後のデバイス開発においては、こうした微小な表面ラフネスの正確な制御が強く要求されます。-->

2017年6月20日 (火) 16:02時点における最新版

当研究室では,宇宙工学,電離気体工学の中心である"プラズマ応用"に主眼を置き,プラズマと接する固体表面・界面でのナノスケール反応機構の理解・応用を目的とした研究を行っています.プラズマ物理,表面反応物理,薄膜固体物理,信頼性物理を基礎とし,特にプラズマ中の原子分子・電子・イオン・フォトンと,絶縁膜・半導体・金属材料とのナノスケール相互作用の解明を通して,プラズマの工学的応用ならびに極限環境下で高機能・高信頼性を実現する新材料,機能素子,システム設計を探求しています.

主な研究テーマ

1.極限環境下における固体表面界面のナノスケール反応機構に関する研究:
  プラズマと固体(絶縁膜,半導体,金属)表面とのナノスケール相互作用は,その材料物性のみならず,システム全体の信頼性寿命に影響します.
  原子レベルでプラズマ-固体表面反応を理解することで,極限環境下での材料腐食などを予測・制御することを目指します.
 (例:イオンエネルギー・フラックス最適化,統計的ばらつき・ゆらぎ最適制御設計,分子動力学・量子化学計算科学など)
2.極限環境下で用いられる新機能材料創製とその信頼性物理に関する研究:
  宇宙空間のような極環境下において高性能・高信頼性を達成する新しい材料・デバイス設計を実現します.
 (例:宇宙用途を鑑みた耐プラズマ性・超硬度特性をもつ薄膜BN構造材料設計,耐放射線性をもつ抵抗変化型メモリデバイスの高信頼性設計など)
3.新機能材料設計のための新しい電気的・光学的物性解析手法の研究:
  高信頼性材料設計を可能にする,誘電関数・量子トンネル過程に着目した新しい解析・設計手法を実現します.
 (例:ナノ領域での新変調反射率分光・キャリア捕獲準位密度定量化など)