Research

京大推進研

2011年7月21日 (木) 16:04時点におけるTsuda (トーク | 投稿記録)による版
移動: 案内, 検索

目次


FTIRによる基板表面診断

右図はシリコンの面方位 (111) の基板をICPによる塩素プラズマでエッチングし、FT-IR (フーリエ変換赤外吸収分光法) を用いて分光測定した結果です。実験装置としては ICP (誘導結合プラズマチャンバー)を用い、パラメータはガス流量 20 sccm, 圧力 20 mTorr, ソースパワー 450 W, バイアスパワー 0-30 W, 分解能 4 cm-1, FT-IR走査回数 2000 回です。FT-IRで測定しているのは反射光の強度で、図に示しているのは吸光度 (エッチング前の基板を測定した結果をエッチング後の測定結果で割って対数をとったもの) です。この測定により知りたいことは基板表面にどのような粒子があるかであり、ピークが得られた波数 (wavenumber) から存在する粒子を同定することが本研究の目的です。
Absorbance.png



プラズマ気相の数値解析

2次元の粒子モデル(PIC/MC: particle-in-cell/Monte Carlo)を用いて容量結合型高周波プラズマの数値解析を行っています。容量結合型のプラズマ源は、大口径のウェハを均一に加工することができる利点を有しています。本研究では、プラズマ密度・温度・ポテンシャル分布のほか、基板へ入射するイオンのエネルギー・角度・フラックス等を算出しています。右図は、本研究で取り扱っているプラズマ源の概略図と、ポテンシャル分布の計算結果を示しています。電極付近にきわめてポテンシャルドロップが大きい領域(シース)の存在が見てとれます。
Chanber.png Potential.png



Si エッチングのモデリング・シミュレーション

原子スケールにおけるプラズマ・Si 表面相互反応の理解のため、当研究室では独自に原子スケールセルモデル(Atomic-Scale Cellular Model:ASCeM)を開発しています。本モデルでは、被エッチング表面を、基板 Si 原子1個を中央に含む矩形の微小セルに分割するとともに、パターン内(Vacuum)も同じ大きさの矩形セルに分割して、表面/界面移動を取り扱います。粒子輸送、表面反応過程にはモンテカルロ法を用い、イオンの散乱や内部への侵入はでは、入射イオンと基板原子との間の二体ポテンシャルにもとづき、入射イオンの基板原子による古典的な弾性衝突過程を連続的に計算し、表面反射や内部への侵入を表現しています。Cl2 プラズマによる Si エッチングで特徴的なマイクロトレンチや RIE ラグ・逆 RIE ラグ等の特異形状の形成には、中性活性種のフラックス量と入射イオンフラックス量が大きく関係していることを突き止めました。側壁隣接したパターン底面では、パターン側壁でのイオン散乱により、入射イオンフラックスが増大し、マイクロトレンチが形成され易くなる一方で、中性活性種が十分存在する場合、イオンアシスト反応によるエッチング速度が増大し、マイクロトレンチ形成と逆 RIE ラグに至ることを示唆しています。

Fig1 tsuda.png



O2 添加時における残渣発現メカニズム解明

ASCeM は、従来のシミュレーターモデルでは再現しにくい鋭い残渣形状(剣山状の形状)や nm スケールの表面ラフネスの形成メカニズムを詳細に解析することが可能です。特に酸素を付加した条件においては、粒子輸送における幾何学的シャドーイング効果により、表面ラフネスがより発達する様子を追跡しました。酸素流入が増えると、パターン底面の局所表面酸化により、残渣(マイクロピラー)が顕著に発現します。各残渣の上部は(凸部)の表面には O 原子が多く存在し、イオン入射によるエッチング/スパッタリングが抑制されるが、残渣の下部(凹部)の表面では、中性シャドーイング効果に起因して O 原子が少なく、イオン入射によるエッチング/スパッタリングが進行して残渣形状が発達することがわかりました。

Fig2 tsuda.png



3次元原子スケールセルモデル (ASCeM-3D)

原子スケールにおけるプラズマ・Si 表面相互反応の理解のため、これまでの 2次元モデルを拡張した 3次元原子スケールセルモデル(Three-Dimensional Atomic-Scale Cellular Model:ASCeM-3D)を用いた、Cl 系プラズマによる Si エッチング形状進展シミュレーションを独自に開発しています。ASCeM-3D はセル・リムーバル法を使った当研究室独自のモデルであり、従来のシミュレーターでは再現しにくい残渣形状や nm スケールの微小な表面ラフネスの形成メカニズムを詳細に解析することが可能です。

  • H. Tsuda, et al., Jpn. J. Appl. Phys. (2011) in press.
Fig3 tsuda.png



大規模スケール分子動力学 (MD) 法

分子動力学(Molecular Dynamics)法を駆使し、Cl2/O2 混合プラズマによる Si エッチングにおける表面反応を追跡しています。これまでの研究により、O 原子は Si 基板原子と強く結びつき、また Si 表面上に局在する傾向があり、そのことが、微小な表面ラフネス形成を引き起こす要因となることを突き止めました。 この微小な表面ラフネスは、さらに大きなスケール(ナノ~マイクロオーダー)のラフネス形成を誘発すると考えられ、今後のデバイス開発においては、こうした微小な表面ラフネスの正確な制御が強く要求されます。

Fig4 tsuda.png